June 19, 2007

飼い主さん、かかりつけの動物病院がやる気を失ってしまいます。

前号の■ペットポータル■: Yahoo!オークション、そんなのあり?では、要指示医薬品という違法出品を取り締まれないYahoo!オークションと違法に出品し続ける業者(あえて業者と書きます)について書きましたが、それ(違法出品)がなくならない状況には、需要があるからだとメールを頂戴しました。

確かにそうですね。
買う人がいるから、販売する人がいるわけです。

小職は動物病院を開設しているわけではありませんが、多くの開業の獣医師の先生とお話をする機会があります。
その際、最近、特に聞くことが多いのが、ペットの特別療法食・ノミダニ駆除薬を処方するのをやめようかと思っている、このままでは廃業も考えなくてはいけない、というものです。

ペットの特別療法食とは、尿石症をわずらっている、食物アレルギーがある、糖尿病である、関節炎があるなど、健康ではないワンちゃん・ネコちゃんのために、特別に成分が調製されたペットフードです。
本来は、健康なペットに与えるものではなく、何らかの症状が出ている個体に与えるフード(食事)ですから、いつからいつまで与えるか、どれくらい与えるかを獣医師が、その犬猫の個体ごとに診察して処方してもらう必要があります。
そのため、ペットフードメーカーも、一般のペットショップで販売される健康維持食とは異なり、動物病院で販売されるよう、流通ルートを分けています。
しかし、これは動物用医薬品ではありません。
食事療法の一つといえますが、治療として用いて、有効率が70%以上とか、薬効が国で確認されたものではなく、そのため医薬品でいうところの「効能・効果」を謳う(うたう)ことはできません。
また、人でいう、トクホ(特定保健用食品)というカテゴリーはペットフードにないので、曖昧といえば、曖昧です。
ですが、獣医業界としては、ペットの健康に資するため、メーカー・ディーラー・動物病院がそれぞれ努力して、その流通を維持してきました。

しかし、その曖昧さがある故に、何軒かの動物病院がこれをバンバン、ネット販売をしています。
でも、先程も申し上げた通り、この特別療法食は健康維持食とは異なり、漫然と与え続けて良いものではありません。
例えば、心臓病のワンちゃんに、減塩食としての特別療法食を与えますが、最近の研究では長期に減塩食を与えることはよくない、との研究報告が出されています。しかし、ネット販売動物病院は、診察している訳ではありません。ただ注文があれば、「まいどおおきに」と郵送するのです。
それでは、飼い主さんは、ペットの個体の状況を獣医学的に正確に判断できるのでしょうか?
できる方もいらっしゃるかもしれませんが、たいていはNOでしょう。
かかりつけの動物病院に行けるか? もし負い目を感じていたら、飼い主さんも地元のかかりつけの動物病院にはいけないでしょう。
そうすると、良かれと思って、ネットで購入したことが、ワンちゃんネコちゃんにとって大きなマイナスになるのです。

確かに安いものではありません。
けれど、そこでの価格には、単にモノの値段だけでなく、病気のことについての説明、治療法についての説明、フードについての説明などの説明責任と、それにかかった獣医師の時間が含まれています。また、■ペットポータル■: Yahoo!オークション、そんなのあり?でも書きましたように、獣医師として、何か異常があったら再診しますよ、あなたのワンちゃんの健康をトータルに責任を持ちますよ、という責任を自分に課して、処方していることを忘れないで欲しいと思います。

「病気について、治療法について2時間話をして、飼い主さんが同意してくれた。フードを処方したが、次からは取りに来ない。病状を心配して電話をかけたら、『ネットで買いました』と言われた。ペットポータルさん、もうこんなやりきれないことはないですよ。これが1日に2件、4時間が空費されたら、もう病院として経営が成り立ちません」と相談を受けます。

皆さん、想像して下さい。あなたの地元のかかりつけの動物病院が廃業してしまって、一生、行くこともないネット販売の動物病院が栄えている姿を…。すでにその予兆が出ています。

この問題の根が深いのは、売れるからといって、ネット販売している業者の多くが、動物病院を併設している獣医師が経営しているということです。
さらにペットショップで販売されている特別療法食は、動物病院が製品を回しているところもあるようです。


さて、次いで苦情が多いのが、動物用医薬品のネット販売です。
ネット販売している動物病院は、動物病院としてではなく、薬事法でいうところの「一般販売業」という業態許可を取得して、薬剤師を雇い、薬局として販売を行っています(逆に申しますと、一般販売業をもたずにネット販売しているところは、薬事法違反です)。

但し、毒・劇薬、要指示医薬品、休薬期間が定められた医薬品等については、薬事法の規定に違反する、使用者に対する情報の十分な伝達や、医薬品の適切な品質管理が確保されない等があるため、農林水産省として、インターネットや通信による販売を行わないよう指導しています。

フィラリア予防薬は、獣医師の処方せんが必要な要指示薬ですので、ネット販売はできません。

けれど、ノミダニ駆除薬は、要指示薬でも休薬期間が定められた医薬品でもないので、一般販売業があれば、ネット販売はできるのです。
動物用医薬品をネット販売する獣医業者は、ここに正当性を得て、販売しています。

ですが、敢えて「ですが」とペットポータルは、飼い主さんに問いたいと思います。

そのノミダニ駆除薬は、飼い主さんにとって本当にネットで買わなくてはいけないものでしょうか?
その特別療法食は、ネットで買わなくてはならないものでしょうか?

あなたの愛するワンちゃん、ネコちゃんが病気になったときに、親身になって夜中でも休日でも診てくれるのは、どこでしょうか?
もしあなたのかかりつけの動物病院が赤字で倒産して廃業してしまったら、どうするのですか?
あなたの街にもあるであろうシャッター商店街を思い起こして下さい。
閉院した人の病院や歯科医院もあると思います。

日本にある、6割の動物病院は、獣医師一人で開業されている病院です。

Winner takes all (勝者がすべてを得る)といいます。
しかし、努力している人の上前をはねるようなネット企業のやり方はいかがかと思います。
そして、飼い主さん、あなたが、それを助長しているとしたら・・・。

投稿者 Yuki : 06:00 AM | コメント (129)

June 15, 2007

Yahoo!オークション、そんなのあり?

Yahoo!オークションで、要指示薬のフィラリア予防薬が頻繁に出品されています。

出品者は、たぶん、私たちと同じ獣医師だと思われます。

「動物用医薬品は値段が高い」から、オークションで安く提供して何が悪い、というこの出品者なりの屁理屈もあるのでしょうが、でも、本当に良心的な値段なのか?というとそんな値段でもない。

仕入原価の数倍の値段で出品して、落札され、購入者から「大変良い出品者」だと評価されています。
yahooauction.JPG
何かおかしくないですか?

実際の臨床現場で処方する際には、獣医師が実際に診療して、健康状態を把握し、血液検査でミクロフィラリアがいないことを確認して、それで処方する、もし副作用が生じた場合は迅速に対応する準備をしている、だからその処方価格が許容されるんだと思うんです。

ワクチンもそうですよね。海外においても、例えば米国でもワクチンは、仕入価格の平均3倍の価格で処方するというデータがあります。それは、アナフィラキシーなどの予期せぬ副作用に対処する必要があるためです。

また、動物用医薬品の販売については、薬事法第49条の規定に基づき、獣医師の処方せん又は指示がないとワクチンや抗生物質等の一定範囲の医薬品は販売できないこととなっています。
さらに、獣医師がこれらの動物用医薬品を投与する場合及び処方せんや指示書の発行を行う場合には、獣医師法(昭和24年法律第186号)第18条の規定に基づき、自ら診察を行うことが義務付けられています。

オークションで落札した飼い主のワンちゃんを、この出品者氏は診察していますか?
つまり、この出品者氏が獣医師であれば、薬事法に違反し、獣医師法にも違反しています。

オークションで落札された動物用医薬品を、飼い主さんがどんな状態のワンちゃんに与えているか、出品者は知ることはできません。売ったら売ったっきり、です。
もし副作用が生じたとしても、出品者は責任を負わないでしょう。
もし落札した飼い主のワンちゃんが、イベルメクチンに感受性の高いコリー犬で、脳に障害が生じたらどうするのでしょう?そんな指導を、オークションでしていますか?していない。 もし異変があったら、すぐに出品者は診てあげられますか?診られない。
そこまでして、その出品に意味がありますか? 妥当性はありますか?

そこに、正義はないと思います。
この出品者が獣医師であれば、獣医師としての責任、誇りや気概も失っていると、私は思います。

Yahoo!側にも、問題があります。
「法律で販売する権利のない、あるいは販売するために必要な許認可を受けていない商品」は出品してはいけない、とガイドラインで謳いながら、それでも、出品を認めている。
上述の通り、この出品は、明らかな薬事法違反であり、獣医師法違反です。

yahooauction2.JPG

ショップを開きながら、違法な製品が売られているとは知りませんでした、と言っているのと一緒です。
その理由として、Yahoo!では、出品された製品をチェックすることはシステム上、できない、とも言っています。
しかし、実際はそんなことはない、写真にあるように、フィラリア予防薬が出品されたら、ちゃんとメールが送信されてきます。ちゃんとYahoo!では、システム上で、製品名なりカテゴリーで見分けています。
yahoo.JPG

かつて小・中学生にとって、男女子とも、なりたい職業No.1に獣医師が挙げられていました。
今でも、小学生女子のなりたい職業No.9、高校生男子のなりたい職業No.18に獣医師がランクインしています(プレジデント 2006年11月13日号)。

社会に認知され、地域に根差し、公衆衛生上、人の健康にも貢献し、次の世代の子供たちに憧れを受けるような存在になれる、獣医師ってそういう素晴らしい職業だと思います。

「売ったらおしまい、後は買った方の責任」という、この出品者は、己自身だけでなく、獣医師全員を貶めている気がします。

違いますか?

投稿者 Yuki : 06:20 AM | コメント (2)

June 13, 2007

カエルツボカビ(第3報)死亡例の発見はないが、侵入を確認

カエルツボカビ、神奈川で感染確認 : ローカルニュース : ニュース : カナロコ -- 神奈川新聞

調査したのは、麻布大学獣医学部の宇根有美准教授らの研究グループで、本格的な野外調査の予備調査として神奈川など九都県で採取した野生種の両生類二十三種百三十二匹を対象に行った。ペット用や研究用として流通していたもののほか、野生環境で捕獲されたものも含まれている。

 このうち、神奈川など五県の八種四十二匹からカエルツボカビが検出、人が触れていない両生類ではウシガエル四匹から確認された。ただ、いずれもカエルツボカビ症は発症しておらず、死亡例もなかった。

この夏から全国規模の調査がされるとのことです。

正しい情報の提供が望まれます。

ツボカビに感染したカエルなどの両生類を野生に捨ててはいけません。

ツボカビに感染した両生類を飼育していた水を川に捨てないで下さい。
環境中にツボカビの胞子や遊走子が入り込んでしまい、根絶できなくなってしまいます。

死んだカエルは、焼却してください。また、清潔なビニール袋などに密封して生ゴミとして出すこともできます。間違っても庭に埋めるなどしないで下さい。

ツボカビ症のカエルの飼育容器の中にあった植物、水草やコケなどは消毒できません。必ずすべて焼却処分してください。土に埋めるなどの処理は、しないでください。

簡単な方法として有効なのは、熱湯による消毒です。ツボカビの遊走子(胞子)の予防対策としては、お湯に飼育容器を漬けるだけでも有効な殺菌方法になります。
実験では30度の水温で遊走子は死ぬとのことですが、万全を期して、飼育していた水にも熱湯を加えて、お風呂ぐらいの温度(40度)くらいになれば、安全だと思います。

■ペットポータル■: カエルツボカビ症に関する情報
■ペットポータル■: カエルツボカビに関する情報(続報)

投稿者 Yuki : 11:01 PM | コメント (0)

June 02, 2007

ブルセラ病陰性犬の新しい飼主さがしについて

■ペットポータル■: 犬のブルセラ症で経過を紹介していました大阪府ブルセラ病感染犬等救援本部で、行き場を失った111頭の犬の内、第4回目の血液検査でブルセラ病が陰性と判定された犬について、無償譲渡が行われるとのことです。

ブルセラ病陰性犬の新しい飼主さがしについて ←大阪府ブルセラ病感染犬等救援本部のページ

1 飼育管理中の犬  111頭の成犬(仔犬はいません) 
         (大型犬 35頭  中型犬34頭  小型犬 42頭)

  グレートピレニーズ(5) シェットランドシープドック(2) ミニチュアダックス(22)
  バーニーズマウンテンドッグ(4) ビーグル(3) トイプードル(2)
  ゴールデンレトリバー(7) ウエルシュコーギー(7) マルチーズ(3)
  エアデールテリア(4) ボーダーコリー(7) チワワ(9)
  ラブラドールレトリバー(15) 雑種(3) ヨークシャテリア(5)
  ジャックラッセルテリア(5) パピヨン(1) パグ(4) ボストンテリア(1)
  フレンチブルドッグ(1) ワイヤーフォックステリア(1)
   (犬の性別、毛色等の詳細につきましては後日掲載予定です)

2 ブルセラ病の検査 採血による4回の検査を実施
  (検査結果は6月中旬に判明の予定)

3 譲渡対象となる犬 111頭のうち4回のブルセラ病の検査で陰性と判定され、救援本部が譲渡可能と判断した犬
  ※(社)大阪府獣医師会、(社)大阪市獣医師会の協力により、全頭に不妊去勢手術を実施

4 新しい飼主の募集 平成19年6月15日~同月22日(申込受付)
  (終生飼育が可能な方)

5 申込書の配布等  平成19年6月7日から(予定)
  (府ホームページ、各府民情報プラザなどを予定)


ここまで進めて来られた大阪府ブルセラ病感染犬等救援本部の皆様、その活動を支援されてきた皆様の成果だと存じます。
111頭全頭に陰性の結果が得られて、終生飼って下さる飼い主さんがみつかりますように。

大阪府ブルセラ病感染犬等救援本部:
大阪府]社団法人社団法人日本動物福祉協会社団法人日本愛玩動物協会社団法人社団法人大阪府獣医師会社団法人 大阪市獣医師会

投稿者 Yuki : 07:58 PM