November 07, 2003

米国の動物用人工血液

写真は、米国で承認されているイヌ用の人工血液「Oxyglobin(オキシグロビン)」です。ボストンに本社を置くBiopure(バイオピュア)社製造の動物用医薬品です。

oxyglobin1.JPG

もう少し大きい画像で見たい方はこちら

血液補給は、単なる水分補給とは異なり、ヘモグロビンによる酸素補給という重要な役割があるため、交通事故による大量出血や、出血を伴う外科手術などでは不可欠なものです。

この製品は室温で2年間保存可能であるので、非常に高価な製品ですが、緊急の輸血用に常備する動物病院もありました。

但し、原料に牛の血液が使われているため、何度も輸血すると犬の体内に抗体ができてしまうことや、ヘモグロビンが溶出して、輸血後に血液検査が異常値を示したり、皮膚が黄色くなる(黄疸)などという副作用も米国では報告されているため、使いづらいとする日本の獣医師の先生もおられます。

また、米国では幸いBSE(牛海綿状脳症)の発生はありませんが、日本では2年前のBSEの発生以後、牛由来の成分を使用した動物用医薬品を輸入することが非常に難しくなりました。

そのため、この製品を今では「まぼろしの動物用人工血液」と呼ぶ獣医師もいます。

動物病院では、緊急の手術用に血液を提供してもらうための供血犬や供血猫を数頭、飼育して、万が一に備えているのが現状です。

しかし、その供血動物からの血液では足りない状態になったら、どうなってしまうのでしょうか?
特に大型のワンちゃんが必要としている場合や、猫でA型の血液が必要なのに、B型の血液しか準備できない場合は・・・。
 (以下、次回へ続く

関連記事 猫用の血液型判定キット新発売 のコメントと合わせてお読み下さい。

下は、ご参考までに、Oxyglobinの英文の製品説明書のPDFファイルですが、非常に重いです(約700kbあります)。
Download File

投稿者 Yuki : November 7, 2003 12:27 AM
コメント

少し、質問をしてもよろしいでしょうか?

人工血液の輸入が出来ないとなると、国内で確保するしか無いという事になりますね。
供血用の犬・猫を飼っておられる動物病院は沢山ありますが、もし、足りない時はどうするのでしょうか?犬や猫の血液は、人間の様に、保存しておく事は出来ないのでしょうか?
1つの病院だけでは足りない時、獣医師さん同士で、協力し合えるネットワークはあるのでしょうか?

Posted by: Reiko : November 7, 2003 01:03 AM

コメントを大変有難うございました。私の今回の説明が中途で終わっており、非常に当を得たご質問だと存じます。
動物病院や地域によっても事情が異なると存じますが、現在の私の知り得ている範囲内でお答えしたいと存じます。

 また、これをお読みになっている獣医師の先生方、あるいは飼い主の皆様方、もしご意見やご経験、動物病院の状況などお教え頂ける情報がございましたら、何なりと追加でコメントをお書き込み下さいますようお願い申し上げます。 以下に書いております私の回答が誤っている場合も、ご指摘下さい。真摯に受けとめ、それ以降、正したいと考えております。

 先ず、第一のご質問ですが、動物病院で飼養されている供血用の犬猫から頂く血液で不足する場合は、あらかじめ、イザという時のために特別にお願いしている飼い主さんに動物から献血をいただくか、近隣の動物病院にお願いして、合う血液を分けていただくということになるかと思います。
 但し、地域や動物病院によって事情は異なりますが、絶対量として余剰があるわけではありませんので、どちらも簡単ではないというのが実情だと思います。

 第二の保存血液ですが、人での献血された血液の保存といいましても、それ程(1ヶ月以上)長期に保存できているるわけではなく、全血で冷蔵保存で約3週間とされています(それでも、過去に比較すれば大きな進歩ですが)。以下をご覧下さい。

  人全血液は摂氏4~6度で採血後21日間、血小板は20~24度で採血後72時間、新鮮凍結血しょうはマイナス20度以下で採血後1年間有効とされています。(出典:山形県保健所ウェブサイト「献血血液はこのように活用されています ~長期の保存が可能になって~ http://www.hokenjo.pref.yamagata.jp/blood-hp/blood4.htm )

 人の場合は、それでも、それらの血液(あるいは血液成分)が国内や県内各地の医療機関で利用されるネットワークができていますので、うまく活用することが可能になっています。それでも、血液が不足し、年中献血が行われていることは、私たち自身、体感していることですよ。

 しかし、動物病院の場合は、例えば、『明日の手術では、多分、輸血が必要になるから、今日のうちに供血犬(あるいは猫)から血を取らせてもらって、冷蔵しておこう』ということはよくあることですが、10日後、あるいは20日後をターゲットにして血液を保存しておくことは、すべての動物病院にお伺いしたわけではありませんが、ほとんどないのではないでしょうか。

例えば、『今日、供血猫(あるいは犬)の体調が良いから血を取って保存しておこう』としても、その間に必要な状況(溶血性の貧血などの動物、交通事故の失血性の急患や、大量出血の外科手術)があるかどうか分かりませんし、また仮にあったとしても血液型が合うかどうかは分かりません(通常は、輸血前にクロスマッチ試験というものを行い、輸血可能かどうかを調べます)。

そうなると、その保存血液は無駄になってしまう危険性があります。そして、それを廃棄した後に、必要な事情がその病院で突然生じても、供血動物のヘモグロビン量が十分に回復していなくて、採血できない状況になっている危険性もあります。供血動物として常時、確保できるのは数頭でしょうから、病院としてはそのような事態はできるだけ避けたい訳です。

ですから、ご質問の『犬や猫の血液は、人間の様に、保存しておく事は出来ないのでしょうか?』には、人間と同じような保存法の研究もされていますが、そのような保存は実用上、行われていないと考えられるというのが見解です。

 第3番目のご質問につきましては、関連の状況からご説明しますと、飼い主の方もお気づきのように、動物病院は獣医師が1名で診療されているところが一番多く、人の医療機関でいうホームドクター的な病院が通常みられる形態です。
 そのため、ネットワーク化の必要性を感じておられる先生方も多くいらっしゃり、多くの先生方は各都道府県の獣医師会や日本獣医師会に所属するほか、学会や研究会の会員となって、診療技術の向上や新しい情報の共有に勉めておられます。
また、狂犬病予防など国家的にも重要な事業では、獣医師会が中心となって、獣医師のネットワークが整備されています。

実際、協力し合えるネットワークを形成されている動物病院のグループもございますが、まだ一部の先生方あるいは一部の地域に限ったことではないか、そして供血動物の血液を自由に共有し合えるようなネットワーク、特に獣医師だけでなく飼い主の方も交えたネットワークに至っては、私が知っている限りではほとんどないのではないでしょうか。
もし既に作られている先生方または飼い主の方々がおられましたら、お詫び申し上げます。
ぜひ、他の全国の飼い主の皆様との情報の共有のために、ご経験なさったこと、お考えのことを何なりとお教え下さい。

Posted by: Yuki : November 8, 2003 02:05 AM