October 08, 2003

2.狂犬病とは

◎対象動物 狂犬病、狂った犬の病気、と単純に考えていませんか? これは、野犬を含むイヌだけの病気ではありません。 イヌ、ネコ、フェレットなどのペットなどの他、キツネ、タヌキ、コウモリ、アライグマ、マングース、スカンクなどの野生動物もかかり、他の動物に伝染させる危険性があります。 それらの動物から、人がかまれた場合、人がかかる危険性があります。人から人へ感染することはないとされています。

地域別狂犬病危険動物種

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地域      主な狂犬病危険動物種
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アジア      イヌ、ネコ
北米       コウモリ、アライグマ、スカンク、キツネ
ヨーロッパ   キツネ
中南米     イヌ、コウモリ、コヨーテ、ネコ
アフリカ     イヌ、マングース、ジャッカル、ネコ
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◎病原体:
ラブドウイルス科の狂犬病ウイルス(rabiesvirus 【狂犬病は英語で「レイビーズ」と発音します】)で、ウイルス粒子は特長ある砲弾型です。
◎感染経路
通常、狂犬病に罹患した動物による咬傷部位(かみ傷)から、唾液に含まれる狂犬病ウイルスが侵入します。人間は感染の最終動物です。実験室内感染では、経気道感染もありうるとされています。
◎潜伏期間
 ・1~2ヶ月(別の報告では2週間~1、2年であり、咬傷部位によって異なる)。
◎臨床症状 【狂犬病は一度発症すれば、死亡率はほぼ100%です。ただし、暴露後(動物に咬まれてウイルスが体内に侵入した後)のワクチン接種により死亡する人は極端に少ないと思われます。】

1.ヒトの狂犬病

前駆期: 2~10日間
発熱、頭痛、倦怠感、筋痛、疲労感、食欲不振、悪心(吐き気)、嘔吐、咽頭痛、空咳(からぜき)等のかぜに似た症状ではじまります。また、咬傷部位の疼痛や掻痒感(かゆみ)、などの知覚異常がみられます

急性期:2~7日間
不安感、恐水発作(水を恐がる)、興奮、精神錯乱、麻痺、筋痙攣などの神経症状があらわれます。ただし、恐水症状を示さない例もしばしばあります。

昏睡期:最終的には、呼吸障害により死亡します。

麻痺型:急性期の神経症状がみられずに麻痺が全身にひろがる例であり、特にコウモリに咬まれて発病したケースに多いとされています。

2.イヌの狂犬病

前駆期:一般に2~3日の経過
   ・性格の変化*と行動の異常(挙動不審、気まぐれ、過敏)
・恐怖心による興奮と飼主に対する反抗、遠吠え
・異物を好んで刺激に応じて咬む
・咬傷部位の掻痒
・瞳孔散大
・性欲の亢進 など

興奮期:一般に1~7日の経過 (この期間が短く、すぐ麻痺期に移行する場合もある)
・落ち着きがなく、興奮状態となる
・異嗜(小枝、わら、石、土などを食べる傾向の多発)
・光や音の突然刺激に対する過敏な反応
・喉頭筋の麻痺による吠え声の変化(嗄声、長吠哀哭)
・顔貌の険悪化
・初回の痙攣発作中に死ななければ、麻痺期に入る

麻痺期:一般に2~3日の経過 (イヌではこの症状が最も多い)
・全身の麻痺症状による歩行不能(特に後躯麻痺)
・咀嚼筋の麻痺による下顎下垂と嚥下困難
・舌を口外に垂らしながら、流涎
・むせるような発声音(しばしば、イヌの喉に物が詰まったとヒトが勘違いして、イヌに咬まれてしまう)
・昏睡状態になり死亡

  *:冒頭のロシアにおける狂犬病のキツネでは、通常、キツネは人を恐がるが、狂犬病に罹ると性格が変化し、人を恐がらなくなり、さらに行動が変化して狂暴化するため、人が咬まれる事故が増えると考えられる。

3.ネコの狂犬病

前駆期:一般に1日の経過
・性格の変化と行動の異常(正常な行動からの突然な変化。愛らしいネコが突然引っかいたり、咬んだりして、うつ状態となり暗い場所に隠れようとする)
・性欲の亢進(雄ネコではペニスの持続性勃起がみられる)
・瞳孔散大 など

興奮期:一般に2~7日の経過 (ネコではこの症状が最も多い)
・筋肉の緊張増加、筋肉の単収縮、全身の筋肉の振戦、筋肉衰弱、流涎、神経過敏、攻撃性の増加
・目に入るものを頻繁に咬む
・嚥下筋肉の麻痺により唾液がたまり流涎を起こす
・痙攣は徴候が見えてからほぼ5日目に顕著となり、後肢麻痺が急速に進行

麻痺期:一般に3~4日の経過
・飲食困難
・全身麻痺
・徴候開始から3~4日以内に昏睡して死亡

◎ヒトにおける治療・発症予防

・狂犬病は一旦発症すれば有効な治療法はありません。ただし、昭和32年以降狂犬病の発生がない日本では、イヌやネコに咬まれた場合、通常は被害者が狂犬病ワクチンを接種する必要はありません。咬傷の処置と、破傷風の感染を予防するために破傷風トキソイドあるいは破傷風免疫グロブリンの投与を行えばよいとされています。
 ・狂犬病の常在地で、狂犬病危険動物に咬まれた場合には、
  1)ただちに傷口を流水と石鹸で十分に洗浄します。
  2)70%エタノールまたはポピドンヨード液で消毒します。
  3)できるだけ早期にワクチンと抗狂犬病ガンマグロブリン(抗体)を投与して、発症を阻止する必要があります(日本では、抗狂犬病ガンマグロブリンは入手困難)。 ワクチンは組織培養不活化狂犬病ワクチンのほうが副反応が弱いので良いとされています。
 WHO およびわが国では暴露後免疫(治療用としてのワクチン)は接種開始日を0として3、7、14、30日の5回接種が推奨されています。場合により、90日の6回接種します。

◎動物における対策・予防

 ・輸入検疫
 ・狂犬病予防接種
 ・狂犬病対応ガイドライン2001の徹底  「狂犬病対策研究会」編 「狂犬病対応ガイドライン2001」 (定価2,300円+税)は下記URLから発注できます。
                          株式会社インフラックスコム 

本特集についてご意見がありましたら、ペットポータル特集:狂犬病について、ペットポータルまでメールを下さい。不勉強な部分もあり、全てにお答えできないかもしれませんが、皆様と一緒に検討できれば、と願っております。

投稿者 Yuki : October 8, 2003 11:18 PM
コメント

人から人に感染する事は絶対ないんですか?

Posted by: ゆったん : May 11, 2008 12:28 AM

ゆったん様:

前述のように、ヒト-ヒト感染はないとされていますが、「絶対ない」とは言えないかもしれません。

狂犬病に感染したヒトの血液や唾液にウイルスが含まれていて、それが健康なヒトの体内に入るようなことがあれば、やはり感染する危険性は否定できないと思います。

Posted by: ペットポータル : August 5, 2008 06:07 PM

犬が狂犬病のワクチンを受けていればその犬に人がかじられても狂犬病にならないのですか?

Posted by: M : January 4, 2009 08:48 AM

狂犬病ワクチンの接種を受けていて、十分に抗体価が上がっていれば、その犬は狂犬病に感染しないと思われますので、狂犬病を伝播することはないと思います。

Posted by: ペットポータル : February 16, 2009 12:56 PM